上記のようなアングル、チャンネル、角パイプなどの突き合わせ溶接をする場合、開先加工の必要が発生し、さらにグラインダー(サンダー)仕上げが必要となります。そのため、部品の製作工数がかかり加工コストの増大につながっていました。

上記のような溶接しろを確保した構造をとることで、部材の組合せのための溶接を隅肉溶接にすることが可能です。開先加工とグラインダー(サンダー)仕上げの工程を省くことができるため、コストダウンを実現することができます。

上記のようなプレートとアングルなどを組み合わせ接合する場合、設計段階から溶接しろをとることで作業工数を劇的に削減することが可能です。この場合の溶接しろの寸法公式は【5≦A≦t/2】となります。

IV‐6リブ位置の変更による工数削減のポイント

上記のような部材の端面にそろう位置にリブを設置すると、内側は隅肉溶接により接合できますが、外側の端面の接合には開先溶接とグラインダー(サンダー)仕上げが必要となります。

外観上に特に制限がない場合、リブの位置を端面から内側に位置させることで隅肉溶接のみで強度をもった接合が可能となります。開先加工やグラインダー(サンダー)仕上げをすることなく、リブを接合できるため、加工工数を削減することができます。

リブを設置する本来の目的は強度を出すことになります。そのため、外観上問題がないような場合には、リブを溶接加工しやすいことが重要になります。その点を踏まえてリブの位置を決定することが設計のポイントになります。

IV‐4研磨工程の削減によるコストダウンのポイント

TIG溶接後の仕上げ工程で、粗めのディスクで溶接ビードを削り、その後、何度も段階的に細めのディスクで仕上げ研磨作業を行わなければならず、そのために溶接工程以上に研磨工程で工数がかかり、コストアップにつながっていました。

YAGレーザー溶接であれば、溶接ビードが細く綺麗な仕上がりになります。外観上の見た目をさほど求めない場合では、溶接焼けを除去するだけでほとんど溶接ビードは削る必要がありません。そのため研磨工程を削減することができ、コストダウンを実現できます。

YAGレーザー溶接は溶接箇所以外への入熱が少ないため、製品に歪みが発生しにくく、溶接後の処理が綺麗に仕上がります。溶接後の工程を削減することができるために溶接自体のコストが高くともトータルで見るとコストダウンになります。

IV‐5板厚選定によるコストダウンのポイント

材料費を抑える目的で使用する板厚を薄くすると、薄板(t=1mm未満)の溶接は非常に熟練した技術が必要になるため、溶接工数が増えてしまいます。そのため歩留まりが悪くなるほか、溶接時間もかかるためコストアップしてしまいます。

カバーを設計する際には機能性を損なわないのであれば、鋼板の厚みをt=1mm以上にすることで加工効率を向上させることができます。t=1mm以上であれば、比較的容易に溶接をすることができるため、サイクルタイムの短縮を実現することができます。

 

板金加工の溶接の難度のひとつとして板厚t=1mmを判断の基準とします。製品の生産工程の中で溶接を含む場合には、設計段階から材料選定の際に板厚を1mm以上にすることで、VA/VEにつながります。

IV‐3製缶構造における部材形状選定のポイント

材料費を下げる目的で、角パイプやアングル、チャンネルの厚みを規格表にある中で薄い厚みの材料を選択することがあります。ただ、薄い厚み材料の方が歪みが生じやすく、溶接や機械加工をする際にトータルコストがアップすることがあります。

鋼材の厚みを上げることによって、材料費自体は高くなる場合でも、溶接時の歪みとり作業の低減や機械加工のびびり振動の発生低減が可能になり、加工工数の削減につながります。そのことにより、トータルコストのコストダウンを実現できます。

板厚を厚くすることで材料コストは上がります(重量が上がるため)が溶接時間・機械加工の時間が短縮されることによってトータルコストが低減されます。設計技術者は生産現場のことも考慮することが求められます。