多品種少量の板金部品設計における加工法

板金加工のコストに大きな影響を与える「型」

設計技術者が身に付けなければならない板金加工の主要加工方法は「打ち抜き・曲げ」、「溶接」、「絞り」と前ページで述べました。板金加工においてローコスト設計のために設計技術者が知っておかなければならない知識が、製品を製作する際に使用する「型」の有無についてです。「型」は数十万から数百万の金額になり、製品のコストを決める上で大きな影響力を持ちます。少量からの生産が求められる現在では設計技術者はイニシャルコストをいかに抑えるかが求められています。「型」が不要な生産方法としてはプレスブレーキ・レーザー切断・タレットパンチを使用した工法が一般的で、製品の生産個数によって最適な工法の選択が必要となります。

型分類加工機用途月産得意不得意公差計算法
型不要 レーザー切断 外形抜き/穴抜き 1000以下 型がない、もしくは汎用性が高いため、一品作り可能
専用型に比べ加工単価は高い
リードタイム:5日くらい
分散加法不可
P・P法を使う
汎用型 タレットパンチ 外形抜き/穴抜き
プレスブレーキ 曲げ
単発型 プレス 外形抜き/穴抜き
曲げ
絞り
3000以下 型費安い
リードタイム:45日くらい
分散加法
総抜き型
(コンパウンド)
プレス 外形抜き/穴抜き
の同時加工
3000以上  型費安い
リードタイム:60日くらい
分散加法
順送型 プレス 外形抜き/穴抜き/曲げ
の同時加工
5000以上 型費安い
大量生産向け
リードタイム:80日くらい
分散加法
トランスファー型 トランスファープレス 外形抜き/穴抜き/曲げ
の同時加工
5000以上 型費高い
大きな絞り加工
リードタイム:100日くらい
分散加法

「型」分類による板金加工の各種加工方法

設計技術者はそれぞれの加工法の得意不得意を理解し、設計図面をかく際の加工コストと型コストを見積もる力が求められます。設計段階で加工方法の知識を頭の中で体系化し、 簡素化することでローコストの部品設計を実現できます。自身が必要とする部品の形状を出すためにはどの工法がもっとも最適かを理解し、加工コストを計算した上で設計する必要があるのです。

出典:日刊工業新聞社出版 ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で「即戦力」

板金加工による部品設計では「型」の有無がコストに大きな影響を及ぼします。少量多品種が求められる現在では、設計技術者は可能な限り「型」の不要な設計図面をかかなければなりません。そのため、各板金加工の特徴を抑える必要があるのです。